年金制度改正のポイントまとめ(2025年5月時点)

はじめに

2025年5月、厚生労働省が年金制度改正法案を国会に提出しました。
この改正は、働き方の多様化や高齢化が進む中で、すべての人が安心して暮らせる社会を目指すものです。
今回は、その中でも特に重要なポイントを、かんたんに一覧でご紹介します。

次期年金制度改正案の概要

1. 社会保険の適用拡大

  • 短時間労働者の適用要件の見直し:賃金要件を撤廃し、企業規模要件も段階的に撤廃。

  • 個人事業所の適用拡大:従来の「非適用業種」も適用事業所に。

  • 保険料負担の軽減措置:事業主が負担した分に対して支援措置。


2. 在職老齢年金制度の見直し

  • 支給停止基準額の引き上げ:月額50万円 → 62万円に(2026年4月から)


3. 遺族年金制度の見直し

  • 遺族厚生年金の男女差解消:60歳未満で死別した子のいない配偶者は原則5年の有期支給に、これまでは対象外だった男性も支給対象となる。

  • 遺族基礎年金の支給要件見直し:父母と生計を同じくする子への支給停止規定の見直し。


4. 厚生年金の上限引き上げ

  • 標準報酬月額の上限:65万円 → 段階的に75万円まで引き上げ。


5. 私的年金制度の見直し

  • iDeCoの加入年齢引き上げ:上限が70歳未満に。

  • 企業年金の情報開示:厚労省が運用状況などを集約・公表。


📌詳細はこちらをご覧ください(厚生労働省公式)
👉 年金制度改正法案を国会に提出しました

おわりに

年金制度は複雑で、改正もたびたび行われるため、「自分にどう関係があるのか分からない…」と感じる方も多いと思います。
でも、将来の安心のためには、少しずつでも正しい情報を知っておくことがとても大切です。

「うちの場合はどうなるの?」「今のうちにできることは?」と気になった方は、ぜひお気軽にFP(ファイナンシャルプランナー)にご相談ください。
あなたのライフプランに合わせて、わかりやすく丁寧にアドバイスいたします!

ネット証券の「フィッシング詐欺」にご注意ください

注意喚起

楽天証券でフィッシング詐欺による「不正アクセス」が多発しており大変な問題となっております。

具体的には、本物のように見せかけた詐欺メールのリンクからログインするなどした結果、ログイン情報(IDとパスワード)を盗まれてしまうというものです。
ちなみにログインされた後は金融資産が勝手にが売却され、代わりに謎の中国株を購入されているという被害とのことです。

 

対策方法

ネット証券を利用されている方も多いと思いますが、面倒でもログイン時の「二段階認証設定」をいただくことで対策可能です。
※「二段階認証」とは、ログイン時に確認メールが届くもので不正ログインを未然に防ぐことが可能です。

楽天証券だけでなくSBI証券やその他ネット証券を使用の方も、この機会に同様の設定をおすすめいたします。
※SBIの場合には「デバイス認証」という名称で同様の設定が可能です。

なお、証券会社から届く「注意喚起メール」自体がフィッシング詐欺である可能性も否めません。設定変更の際にはブラウザで公式HPを検索のうえログインいただく方が安全です。

ニュースにもなっておりご存知の方もいらっしゃると思いますが、重ねてご案内させていただきました。

大切な資産を守るためにも、今一度ご自身の設定確認をお願いいたします。

「遺族年金の改悪」という報道について

はじめに

2024年7月30日の社会保障制度審議会にて遺族年金の見直し案が提出されました。
ニュースなどでご存知の方もいると思いますが、
「遺族年金が5年で打ち切りに!?」
「改悪だ!」
などと歪曲した報道をされることが多いように思います。

ただ、この見直し案をよく読んでみると決して単純な改悪などではなく、現代の男女平等社会に則った制度改定案であることが分かります。

やや専門的かつマニアックなFP通信になりますが、一般の方でもナナメ読みで大枠がつかめるように、ざっくりまとめてみます。
世間のトレンドの一つとして、ご参考になれば幸いです。

なお、見直し案の原文を読みたいという意欲的な方はこちらからご覧ください。分かりやすくまとめられています。
厚生労働省:遺族年金制度等の見直しについて

 

見直しのポイントについて

まず第一の誤解しやすいポイントですが、
・18歳未満の子を持つ配偶者(夫&妻)
・60歳以上の配偶者(夫&妻)
への遺族年金制度は現行通り変更はありません


出典:「遺族年金制度等の見直しについて」(厚生労働省)を加工し作成

 

そして、今回見直し対象になるのは「子のない配偶者」の遺族厚生年金となります。


出典:「遺族年金制度等の見直しについて」(厚生労働省)を加工し作成

 

なぜ見直しの話が出ているのか?

実は、現行制度の「子のない配偶者」への遺族厚生年金は男女差があるのです。

例えば妻を亡くした夫については55歳未満の場合受給権が発生しません。
これは「男は当然に働くもので大黒柱であるのだから、妻を無くしても収入に影響は少ないだろう」という思想が背景です。

また、夫を亡くした40歳以降の子のない妻は現行制度では「中高齢寡婦加算」という給付を受けとることができます。
これは文字通り女性だけが受け取れるもので、主婦だった女性が40歳で以降で再就職するのは難しいだろうという時代のなごりとなっています。

このように、現行制度はやや「前時代的」な給付内容になっているわけです。

令和の今、前時代と比べ確実に男女は平等に近づいています。
女性も当たり前に就労するようになり、男性よりも稼ぐ方も珍しくはありません。
つまり、年金制度だけが「置いてけぼり」になっており、今回この点も男女平等にというのが主な見直しの背景となっています。

 

見直し案の具体的な内容(参考)

《子のない妻》
現在は30歳未満の妻は5年間の有期給付となっています。
この有期給付の年齢を概ね25年かけて段階的に引上げし、また中高齢寡婦加算も逓減させ廃止(男女差の廃止)

《子のない夫》
現在は55歳未満は受給権がありませんが、死別後の生活環境の激変を再建することを目的とし、夫も有期給付の対象に追加

《子》
現在は扶養する方がいる子の場合には、子への遺族基礎年金は支給停止となります。
支給停止の一例として、例えば離別した元配偶者に引き取られた場合や、祖父母と養子縁組した場合などがあげられます。
子自身が自らの選択でその環境になったわけではないのに支給停止されてしまう現状を見直しとし、不均衡の解消が図られます。

 

まとめ

年金制度見直しのざっくりとした概要は以上の通りです。
個人的には真っ当な案であり、また既に現行制度を見越して人生設計をしている方への配慮もあることも好印象です。

ちなみに、今回は子のない配偶者が主な見直し対象ですが、これらの方は相続時にトラブルに巻き込まれてしまう可能性があることをご存知でしょうか。

具体的には、配偶者は常に相続人となり2/3の法定相続分があるわけですが、第2順位は無くなった配偶者の親が1/3の法定相続分を持つことになります。
※もし親などがいない場合には無くなった配偶者の兄弟姉妹が第3順位となります。

つまり、自分自身の財産を、配偶者本人と、自分自身の親や兄弟という配偶者からみれば“血のつながりの無い人”とで分割協議せざると得ないということです。
もちろん関係が良好であれば全く問題はないかもしれませんが、場合によっては事前に対策しておいた方が良いケースも多々あるように思います。

もしご自身では解決がしづらい場合には「一番身近なファイナンシャルプランナー」である弊社までお問い合わせいただければと思います。

定額減税スタート!私たちへの影響は?

はじめに

令和6年6月1日より定額減税がスタートされます。
ここでは減税の概要をざっくりつかみ、私たちへの影響をまとめました。

 

定額減税とは

定額減税とは、令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税(住民税も)の特別控除が実施されるという制度です。

要するに「税金を減らしますよ」ということです。
※詳細に知りたい方ははこちらをご確認ください。
国税庁:定額減税特設サイト

 

対象者

定額減税を受けることができる方は、次のいずれにも該当する方です。

◇令和6年分の所得税の納税者である方(居住者に限ります。)
◇令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方

定額減税額

定額減税額は、次の①と②の合計額です。
なお、その合計額がご自身の所得税額を超える場合には、その所得税額が限度となります。
①本人:30,000円
②同一生計配偶者又は扶養親族:1人につき30,000円
※同一生計配偶者とは合計所得が48万円未満(=年収103万円未満)の方
※扶養親族は16歳未満でも対象内になります。

例えば、本人+専業主婦の配偶者、16歳未満のお子様2人の4人家族の場合だと、
・本人:30,000円
・配偶者:30,000円
・お子様:30,000円×2名=60,000円
となり、合計120,000円を上限に減税されるということです。

注意点

定額減税は勤務先にて計算されるため、お勤めの方のご負担は少ないです。
ただ、勤務先は6月1日時点での情報で定額減税額を計算するため、
・途中で出産があった
・扶養親族の人数が増減した
・配偶者の所得が48万円を超えた
などの異動があった場合には、速やかに勤務先担当者へご申告なさっていただけたらと思います。

 

ローン控除との関係

◇住宅ローン控除は優先
年末調整の計算では、定額減税に先立ってまず住宅ローン控除を差し引くこととなっています。
つまり、月次減税で差し引いた分を一旦考慮せず(差し引かなかったものとして)、住宅ローン控除を実施するという認識で良いかと思われます。

◇調整給付
住宅ローン控除で全額税額控除され、所得税が0円になる場合もあるのではないでしょうか。
この場合は定額減税がなされないととなってしまいますが、差し引けなけった定額減税分については、減税ではなく“給付”として受取りできるようになる見込みです。
※まだ正式な通達は出ておらず、あくまで見込みの段階です。

 

住民税について

住民税の減税額は1人につき10,000円です。
減税方法は総務省のQ&Aによると以下の通りです。

令和6年6月分は徴収せず、「定額減税「後」の年税額」を令和6年7月分~令和7年5月分の11か月で均した税額を徴収する。

つまり、6月は一律0円となり手取りが増えますが、7月には住民税の給与天引(=特別徴収)が始まりますよということです。
よって7月給与は6月給与と比べ”手取りが減ったように感じる”点はご注意ください。