金利が動き出した今こそ、家計とライフプランをやさしく総点検

最近銀行口座の利息を見られたかたのなかには、「利息ってこんなにつくの!?」とびっくりされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
長く続いた「超」低金利の世界から、少しずつ“金利のある世界”へ。貯めるにも、借りるにも、そして投資にも、これまでとは違うコツが求められます。この記事では、メリット・デメリットを整理しつつ、今日からできる具体策をわかりやすくお伝えします。

1. いま、何が起きている?(かんたん整理)

  • 金利がじわじわ動いている:銀行預金の利息が少しずつ増え、同時にローンの金利も影響を受けやすい環境です。

  • 「貯める」「借りる」「ふやす」のバランス再設計:現金・預金の置き方、ローンの金利タイプ、投資の組み合わせを見直す好機です。

  • 正解は人それぞれ:家計の収支、ライフイベントの時期、資産・負債の内訳で最適解は変わります。だからこそ“あなたのプラン”が大切。

2. 金利上昇のメリットとデメリットを素直に比較

メリット:預金の利息が増えやすい

  • 例)100万円を年利0.2%で1年預けると、税引後の利息は約1,594円
    年利0.5%なら約3,984円1.0%なら約7,969円まで伸びます(利子税20.315%考慮)。

  • 使い分けのコツ

    • 生活費6〜12か月分は出し入れしやすい口座へ。

    • 使う時期が決まっているお金は短めの定期預金を少しずつずらして組む「階段(ラダー)方式」で、上がる金利を取り込みやすく。

デメリット:借入の返済額が増えやすい

  • 住宅ローンなど変動金利は影響を受けやすい代表例。
    例)3,000万円・35年の返済モデル

    • 金利0.5%:毎月約77,876円

    • 金利1.5%:毎月約91,855円約1.4万円増)

    • 金利2.0%:毎月約99,379円約2.1万円増)
      ※あくまで概算の一例です。商品条件や見直しルールで異なります。

3. 借入(ローン)の見直しポイント

住宅ローン(変動 vs 固定)

  • 変動金利:当面の返済額は低めになりやすい反面、金利が上がると将来の負担増に。
    (一部の金融機関で見直しルールがあり、返済額の急上昇が抑えられる場合もありますが、商品ごとに異なるため要確認)

  • 固定金利:返済額が読めて安心。ただし契約時点では変動より高めになりやすい。

検討のコツ

  1. 残高・残期間・家計余力を把握(家計の月間黒字やボーナスの安定性もセットで確認)。

  2. 繰上返済:固定費カットと同じ効果。教育費ピークや転居予定など、イベント前後のタイミングで計画的に。

  3. 借換え:事務手数料・保証料・団信の条件を含め総コストで比較。

  4. 金利タイプの組み合わせ:全額を固定/変動に寄せず、ミックスで“上がる・上がらない”の両局面に備える方法も。

住宅以外のローン

  • 自動車ローン・カードローンなどは金利が高めになりやすいので、返済優先順位を上げると総支払額を減らせます。

  • 教育ローンは金利だけでなく、借入期間・返済開始時期(在学中据置き等)も総額に直結。

4. 貯蓄と運用のバランスを整える

「生活防衛資金」を先に確保

  • 目安は生活費6〜12か月分。安心の土台があるほど、残りの資金を運用に回す判断がしやすくなります。

預金の置き方

  • 当座用:給与口座+予備口座で出し入れをシンプルに。

  • 短期〜中期用短期定期のラダーで金利上昇の恩恵を取り込みつつ、流動性も確保。

  • 目的別:旅行・教育・リフォームなど、目的別口座で見える化するとムダづかい防止に効果大。

投資の考え方(やさしく3点)

  1. 時間分散:積立(ドルコスト)で価格変動のブレをやわらげる。

  2. 資産分散:国内外の株式・債券・現金などを組み合わせ、一つに偏らない

  3. 期間と目的の整合:5年以内に使うお金は値動きの小さい手段で。10年以上の資金は成長性も検討。

債券は金利上昇=価格下落が基本。価格のブレを抑えたい場合は、期間の短い債券(短期・中期)や分散型ファンドの活用を検討。
いっぽう、**個人向け国債(変動10年)**のように、金利に連動する設計の選択肢もあります(詳細条件は最新の募集要項で要確認)。

5. 「繰上返済」と「投資」どっちを優先?

考え方の軸はとてもシンプルです。

  • 借入金利(税引後の実質コスト) 投資の期待リターン(税引後・手数料控除)
    繰上返済を優先する方が合理的になりやすい。

  • 借入金利 投資の期待リターン
    → 長期の資産形成を優先する選択もアリ。

ただし、生活防衛資金の確保家計の安定が大前提。数字上は投資優先に見えても、急な出費で高金利の借入に頼ることになれば逆効果です。無理のない範囲で。

6. ライフイベントと金利の相性をチェック

  • 出産・育休:収入減の期間は、金利上昇と返済増が重ならないよう、早めに資金クッションを厚めに。

  • 教育費ピーク(中学〜大学):塾・受験・学費でキャッシュアウトが増加。ローンの見直しや繰上返済の“やりすぎ”に注意。

  • 住み替え・リフォーム:新規借入が想定されるなら、固定/変動の比率頭金の設計でリスクを抑える。

  • 定年・セカンドライフ:年金と生活費の差額(不足額)を可視化し、金利変動に左右されにくい収入源(年金・債券・配当など)の組み合わせを検討。

7. 税制優遇の活用(サクッと要点)

  • 新NISA(恒久化):長期・分散・積立に追い風。売却益・配当が非課税

  • iDeCo/企業型DC:掛金が所得控除、運用益非課税。老後資金の“核”づくりに有効。
    → いずれも無理のない金額で、家計の流動性を損なわない範囲から。制度の細かな条件は最新情報を必ずご確認ください。

8. 今日からできる「3つの行動」

  1. 家計の“静止画”を撮る
     収入・支出・資産・負債を、紙でもアプリでもいいので1枚にまとめる。まずは見える化。

  2. ローンと預金の“温度差”を測る
     借入金利と預金利回りの差、残高・残期間をチェック。差が大きいほど、繰上返済や借換えの効果が出やすい。

  3. ライフイベントの“年表”を書く
     教育・住まい・車・リフォーム・独立・退職など、使う時期と金額の目安を書き出す。使う時期が近いお金は安全に、遠いお金は成長性を。

9. よくあるご質問(簡潔バージョン)

Q. 変動から固定にすぐ変えるべき?
A. 一概には言えません。残期間・残高・借換コスト・家計余力の4点で“総額”比較を。

Q. 繰上返済はボーナス一括が良い?
A. タイミングよりもトータル量が効きます。家計の安全域を削らず、定期的に少額ずつでも続けるのが現実的。

Q. 預金と投資の比率は?
A. 「生活防衛資金の確保」→「中期資金の安全運用」→「長期資産の成長」の順。年齢や収入の安定度、家族構成で最適比率は変わります。

10. まとめ:先の見えない時代だからこそ、計画は“慎重に・具体的に”

  • 金利が動く今は、家計の固定費(ローン)を軽くし、預金の置き場を賢く選び、投資は目的と期間に合わせることが鍵。

  • 「なんとなく不安」を「数字で見える安心」に変えるだけで、行動の質が上がります。

  • そして、正解はご家庭ごとに違います。あなたの数字・あなたの予定に合わせた設計図づくりが一番の近道です。

ご相談のご案内

金利タイプの選び方、繰上返済の適量、預金と投資の比率、ライフイベント資金の年表づくりまで、お一人おひとりの状況に合わせて一緒に作成いたします。
オンライン・対面どちらも可能です。まずはお気軽にご相談ください。

この記事の内容は一般的な情報提供です。実際の判断は、商品条件・税制・ご家庭の状況をご確認のうえで行ってください。分からない点は、そのままにせずご相談くださいね。

年金制度改正のポイントまとめ(2025年5月時点)

はじめに

2025年5月、厚生労働省が年金制度改正法案を国会に提出しました。
この改正は、働き方の多様化や高齢化が進む中で、すべての人が安心して暮らせる社会を目指すものです。
今回は、その中でも特に重要なポイントを、かんたんに一覧でご紹介します。

次期年金制度改正案の概要

1. 社会保険の適用拡大

  • 短時間労働者の適用要件の見直し:賃金要件を撤廃し、企業規模要件も段階的に撤廃。

  • 個人事業所の適用拡大:従来の「非適用業種」も適用事業所に。

  • 保険料負担の軽減措置:事業主が負担した分に対して支援措置。


2. 在職老齢年金制度の見直し

  • 支給停止基準額の引き上げ:月額50万円 → 62万円に(2026年4月から)


3. 遺族年金制度の見直し

  • 遺族厚生年金の男女差解消:60歳未満で死別した子のいない配偶者は原則5年の有期支給に、これまでは対象外だった男性も支給対象となる。

  • 遺族基礎年金の支給要件見直し:父母と生計を同じくする子への支給停止規定の見直し。


4. 厚生年金の上限引き上げ

  • 標準報酬月額の上限:65万円 → 段階的に75万円まで引き上げ。


5. 私的年金制度の見直し

  • iDeCoの加入年齢引き上げ:上限が70歳未満に。

  • 企業年金の情報開示:厚労省が運用状況などを集約・公表。


📌詳細はこちらをご覧ください(厚生労働省公式)
👉 年金制度改正法案を国会に提出しました

おわりに

年金制度は複雑で、改正もたびたび行われるため、「自分にどう関係があるのか分からない…」と感じる方も多いと思います。
でも、将来の安心のためには、少しずつでも正しい情報を知っておくことがとても大切です。

「うちの場合はどうなるの?」「今のうちにできることは?」と気になった方は、ぜひお気軽にFP(ファイナンシャルプランナー)にご相談ください。
あなたのライフプランに合わせて、わかりやすく丁寧にアドバイスいたします!

ネット証券の「フィッシング詐欺」にご注意ください

注意喚起

楽天証券でフィッシング詐欺による「不正アクセス」が多発しており大変な問題となっております。

具体的には、本物のように見せかけた詐欺メールのリンクからログインするなどした結果、ログイン情報(IDとパスワード)を盗まれてしまうというものです。
ちなみにログインされた後は金融資産が勝手にが売却され、代わりに謎の中国株を購入されているという被害とのことです。

 

対策方法

ネット証券を利用されている方も多いと思いますが、面倒でもログイン時の「二段階認証設定」をいただくことで対策可能です。
※「二段階認証」とは、ログイン時に確認メールが届くもので不正ログインを未然に防ぐことが可能です。

楽天証券だけでなくSBI証券やその他ネット証券を使用の方も、この機会に同様の設定をおすすめいたします。
※SBIの場合には「デバイス認証」という名称で同様の設定が可能です。

なお、証券会社から届く「注意喚起メール」自体がフィッシング詐欺である可能性も否めません。設定変更の際にはブラウザで公式HPを検索のうえログインいただく方が安全です。

ニュースにもなっておりご存知の方もいらっしゃると思いますが、重ねてご案内させていただきました。

大切な資産を守るためにも、今一度ご自身の設定確認をお願いいたします。

「遺族年金の改悪」という報道について

はじめに

2024年7月30日の社会保障制度審議会にて遺族年金の見直し案が提出されました。
ニュースなどでご存知の方もいると思いますが、
「遺族年金が5年で打ち切りに!?」
「改悪だ!」
などと歪曲した報道をされることが多いように思います。

ただ、この見直し案をよく読んでみると決して単純な改悪などではなく、現代の男女平等社会に則った制度改定案であることが分かります。

やや専門的かつマニアックなFP通信になりますが、一般の方でもナナメ読みで大枠がつかめるように、ざっくりまとめてみます。
世間のトレンドの一つとして、ご参考になれば幸いです。

なお、見直し案の原文を読みたいという意欲的な方はこちらからご覧ください。分かりやすくまとめられています。
厚生労働省:遺族年金制度等の見直しについて

 

見直しのポイントについて

まず第一の誤解しやすいポイントですが、
・18歳未満の子を持つ配偶者(夫&妻)
・60歳以上の配偶者(夫&妻)
への遺族年金制度は現行通り変更はありません


出典:「遺族年金制度等の見直しについて」(厚生労働省)を加工し作成

 

そして、今回見直し対象になるのは「子のない配偶者」の遺族厚生年金となります。


出典:「遺族年金制度等の見直しについて」(厚生労働省)を加工し作成

 

なぜ見直しの話が出ているのか?

実は、現行制度の「子のない配偶者」への遺族厚生年金は男女差があるのです。

例えば妻を亡くした夫については55歳未満の場合受給権が発生しません。
これは「男は当然に働くもので大黒柱であるのだから、妻を無くしても収入に影響は少ないだろう」という思想が背景です。

また、夫を亡くした40歳以降の子のない妻は現行制度では「中高齢寡婦加算」という給付を受けとることができます。
これは文字通り女性だけが受け取れるもので、主婦だった女性が40歳で以降で再就職するのは難しいだろうという時代のなごりとなっています。

このように、現行制度はやや「前時代的」な給付内容になっているわけです。

令和の今、前時代と比べ確実に男女は平等に近づいています。
女性も当たり前に就労するようになり、男性よりも稼ぐ方も珍しくはありません。
つまり、年金制度だけが「置いてけぼり」になっており、今回この点も男女平等にというのが主な見直しの背景となっています。

 

見直し案の具体的な内容(参考)

《子のない妻》
現在は30歳未満の妻は5年間の有期給付となっています。
この有期給付の年齢を概ね25年かけて段階的に引上げし、また中高齢寡婦加算も逓減させ廃止(男女差の廃止)

《子のない夫》
現在は55歳未満は受給権がありませんが、死別後の生活環境の激変を再建することを目的とし、夫も有期給付の対象に追加

《子》
現在は扶養する方がいる子の場合には、子への遺族基礎年金は支給停止となります。
支給停止の一例として、例えば離別した元配偶者に引き取られた場合や、祖父母と養子縁組した場合などがあげられます。
子自身が自らの選択でその環境になったわけではないのに支給停止されてしまう現状を見直しとし、不均衡の解消が図られます。

 

まとめ

年金制度見直しのざっくりとした概要は以上の通りです。
個人的には真っ当な案であり、また既に現行制度を見越して人生設計をしている方への配慮もあることも好印象です。

ちなみに、今回は子のない配偶者が主な見直し対象ですが、これらの方は相続時にトラブルに巻き込まれてしまう可能性があることをご存知でしょうか。

具体的には、配偶者は常に相続人となり2/3の法定相続分があるわけですが、第2順位は無くなった配偶者の親が1/3の法定相続分を持つことになります。
※もし親などがいない場合には無くなった配偶者の兄弟姉妹が第3順位となります。

つまり、自分自身の財産を、配偶者本人と、自分自身の親や兄弟という配偶者からみれば“血のつながりの無い人”とで分割協議せざると得ないということです。
もちろん関係が良好であれば全く問題はないかもしれませんが、場合によっては事前に対策しておいた方が良いケースも多々あるように思います。

もしご自身では解決がしづらい場合には「一番身近なファイナンシャルプランナー」である弊社までお問い合わせいただければと思います。

定額減税スタート!私たちへの影響は?

はじめに

令和6年6月1日より定額減税がスタートされます。
ここでは減税の概要をざっくりつかみ、私たちへの影響をまとめました。

 

定額減税とは

定額減税とは、令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税(住民税も)の特別控除が実施されるという制度です。

要するに「税金を減らしますよ」ということです。
※詳細に知りたい方ははこちらをご確認ください。
国税庁:定額減税特設サイト

 

対象者

定額減税を受けることができる方は、次のいずれにも該当する方です。

◇令和6年分の所得税の納税者である方(居住者に限ります。)
◇令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方

定額減税額

定額減税額は、次の①と②の合計額です。
なお、その合計額がご自身の所得税額を超える場合には、その所得税額が限度となります。
①本人:30,000円
②同一生計配偶者又は扶養親族:1人につき30,000円
※同一生計配偶者とは合計所得が48万円未満(=年収103万円未満)の方
※扶養親族は16歳未満でも対象内になります。

例えば、本人+専業主婦の配偶者、16歳未満のお子様2人の4人家族の場合だと、
・本人:30,000円
・配偶者:30,000円
・お子様:30,000円×2名=60,000円
となり、合計120,000円を上限に減税されるということです。

注意点

定額減税は勤務先にて計算されるため、お勤めの方のご負担は少ないです。
ただ、勤務先は6月1日時点での情報で定額減税額を計算するため、
・途中で出産があった
・扶養親族の人数が増減した
・配偶者の所得が48万円を超えた
などの異動があった場合には、速やかに勤務先担当者へご申告なさっていただけたらと思います。

 

ローン控除との関係

◇住宅ローン控除は優先
年末調整の計算では、定額減税に先立ってまず住宅ローン控除を差し引くこととなっています。
つまり、月次減税で差し引いた分を一旦考慮せず(差し引かなかったものとして)、住宅ローン控除を実施するという認識で良いかと思われます。

◇調整給付
住宅ローン控除で全額税額控除され、所得税が0円になる場合もあるのではないでしょうか。
この場合は定額減税がなされないととなってしまいますが、差し引けなけった定額減税分については、減税ではなく“給付”として受取りできるようになる見込みです。
※まだ正式な通達は出ておらず、あくまで見込みの段階です。

 

住民税について

住民税の減税額は1人につき10,000円です。
減税方法は総務省のQ&Aによると以下の通りです。

令和6年6月分は徴収せず、「定額減税「後」の年税額」を令和6年7月分~令和7年5月分の11か月で均した税額を徴収する。

つまり、6月は一律0円となり手取りが増えますが、7月には住民税の給与天引(=特別徴収)が始まりますよということです。
よって7月給与は6月給与と比べ”手取りが減ったように感じる”点はご注意ください。