はじめに
日本人が一生のうちにがんと診断される確率は(2019年データに基づく)
男性65.5%(2人に1人)
女性51.2%(2人に1人)
出典「国立がん研究センターがん情報サービス」
上記のように、我々日本人にとってがんは非常に身近な病気です。
一方で、現在では治療の進歩によって多くの方ががんと向き合い、付き合いながら罹患前と同じような生活を過ごせるようになってきています。
では、もしがんになったらどのような治療をするのでしょうか?
そして、どのような保険があれば安心して治療に臨めるのでしょうか?
ここではお忙しい皆様向けに、時系列に沿って治療方法の変遷をざっくりと解説します。
進歩するガン治療と民間保険
ガン治療は日進月歩で進歩しています。
●従来の治療方法
かつてガン治療といえば入院と手術が基本でした。
ちなみに、この頃発売された民間保険は、これらの治療に備えるべく入院日額(入院1日あたりに受け取れるもの)や手術給付金が手厚いタイプが主流でした。
●近年の治療方法
手術に加え、“抗がん剤治療”や“放射線治療”など複数の治療を組み合わせて治療が行われるようになりました。
抗がん剤治療や放射線治療は通院で行われることも多く、普段の仕事や日常生活を継続しながら治療することで患者さんの生活の質(QOL)の向上が期待できます。併せて、通院治療の増加に伴い、入院日数が減少傾向にあるのもポイントのひとつです。
ちなみに、これらの治療は《標準治療》と呼ばれ公的医療保険の適用となります。
“標準”と聞くと、なんだか最新ではない普通の治療のように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は科学的な根拠のある最新・最良の治療法なのです。
そのためガン治療を始める際には、まずは主治医の指示のもと標準治療を受けられるのが最も良い選択のひとつなのではないでしょうか。
民間保険については、従来の入院&手術タイプの保険では通院治療をカバーしきれず、そのままでは多くの自己負担がかかる可能性も捨てきれません。
つまり、治療の進歩に伴い民間保険も当然に見直しが必要だということです。
そのため現在では、
・がんと診断されただけで受け取れるタイプ
・治療ごとに毎月受け取れるタイプ
などの民間保険が主流となっています。
そもそも入院&手術の治療は医療保険でカバーできる部分も多く、ガン保険としては、長引く通院治療や収入減少をいかにカバーするかが保険設計での肝心要なポイントとなっています。
公的保険の適用とならない治療
《標準治療》がない場合や、《標準治療》では残念ながら完治できなかった場合でも諦める必要はありません。
この場合には、
・先進医療
・患者申出療養
・自由診療
を検討することとなりますが、それらは公的保険の適用とはならず原則として全額自己負担となります。
なお、近年ではこれらの治療でも支払い対象となる民間保険も少しずつ増えてきていますのでご安心ください。
【参考解説】
●先進医療とは?
医療機関が起点となり、厚生労働省が定める高度な医療技術を用いた治療のうち、将来的に公的保険の給付対象にすべきかを見定め評価する段階の治療をいいます(=評価療養といいます)
●患者申出療養とは?
患者さんの申出が起点となり、日本では未承認や対象外の薬などを迅速かつ身近な病院で受けられる可能性のある制度です。
(将来的に保険適用をめざすためのデータ集積ができるため、こちらも評価療養の一種です)
厚生労働省 患者申出療養制度
●自由診療
評価療養ではなく、かつ保険診療ではない治療です。入院費等も含め全額自己負担となります。
※評価療養の場合には、入院料などの一部を保険給付対象とすることができます。
まとめ
厚生労働省の資料によると、令和3年7月1日~令和4年6月30日(1年間)での患者申出療養の件数は296人、治療費総額は2.6億円だったそうです。
これらはほんの一握りの結果に過ぎず、中には治療したくても治療費が高額で諦めざるを得なかった患者さんも多くいるのではないでしょうか。
ガン治療にはお金が必要です。
治療費の負担や収入の減少などで、思い描いていたライププランが変わってしまうこともあるかもしれません。
民間保険への加入が全て是であるとは思いませんが、身近ながんという病気にご自身がどう向き合っていきたいか、もし良ければこの機会に少し考えてみていただければ幸いです。