はじめに
日銀が「マイナス金利」を解除したとニュースで話題になっています。
メディアでは「住宅ローンにも大きな影響がある」というような報道がされていますが、実際にはどうなのでしょうか?
もちろん未来は誰にも分かりませんが、住宅ローンの基礎を知っておくことである程度メディアに踊らされることはなくなります。
そのため、ここではそもそもの金利の決まり方についてご紹介します。
金利の決まり方
私たちが借りる住宅ローンの金利は、その基準となる指標と、引き下げにより構成されます。
指標について
一般的に金利は下記の指標を基に設定されます。
●固定金利
長期国債(新発10年国債)の金利から予想
●変動金利
短期プライムレート+1%
※短期プライムレートとは
銀行が最優良の企業(業績が良い、財務状況が良いなど)に貸し出す際の最優遇貸出金利(プライムレート)のうち、1年以内の短期貸出の金利を「短期プライムレート」という。
※あくまでも一般的なもので、金融機関により異なる場合があります。
引き下げについて
日本銀行の統計によると、短期プライムレートは平成21(2009)年1月13日以降、現在に至るまでずっと1.475%です。
つまり多くの銀行が基準金利を2.475%(1.475%+1%)に設定しているということです。
一方で皆様が借入された際の金利は2.475%ではないはずで、その理由は各銀行による“引き下げ”があるためです。
引き下げとは簡単に言えば“値引き”のようなものです。確かに住宅ローン自体の金利は低いのですが、銀行から見れば長期かつ安定的な金利収入のひとつとなります。
金利が低ければ低いほどその銀行で借入をする方は多くなるわけで、各銀行はしのぎを削って値引き合戦をしているというのが現状です。
変動金利のリスク
金利の決まり方の基礎が分かったら次はリスクについてです。
固定金利は金利が固定されるというメリットの代わりに、変動金利よりもそもそもの金利は高いという特徴があります。
その是非についてはまたの機会に書こうと思いますが、金利リスクの観点から見れば変動金利の方が影響は大きいのは間違いありません。
つまり、金利が上昇した場合には支払額が増えるということです(もちろん金利が下落すれば支払額も減少します)
※リスクとは不確実であることを指します。
※実際には支払額の見直しは5年毎であったり、増額した返済額の上り幅が125%に抑えられるなどの措置はありますが、ここでは取り上げません。
そのため今回のマイナス金利解除で、短期プライムレートが上がることがあれば変動金利も上がることになる点はご理解いただけるかと思います。
結局、金利への影響はあるのか?
これまで記載してきた通り、変動金利が上がる要因は短期プライムレートの上昇になります。
短期プライムレートが上がるかどうかは、誰にも断定はできません。
一方で多くの都市銀行はこの「マイナス金利解除」を受けても短期プライムレートを据え置くことに決めており、直近での家計への影響は少ない(もしくは全くない)というのが現状です。
今後、日銀が金利をもっと上げるということがあれば、それは“消費を抑制する政策”を取ったということですから、その時点の日本の景気はきっと好景気かつインフレであることでしょう。
仮に日本の景気が好循環しバブル並みになるのであれば住宅ローンへの影響はあるかもしれませんが、その時は今よりも豊かな生活になっているでしょうし、まず現時点ではメディアが煽るほど心配な状況にはなっていない点は安心いただいて良いかと思います。
なお、変動金利の基準金利は変動はないものの、
・銀行の引き下げ幅(=値引き)は少なくなるなどの調整がされる可能性はあること
・長期国債を基準とする固定金利は実際に微増している銀行もあること
から、これから住宅ローンを組む方にはやや影響はあるかもしれません。
それでもそこまで心配するほどではないと思いますが、住宅購入は家計に与える影響が大きいイベントでもあります。
もし住宅計画に不安があればいつでもお気軽にご相談ください。