はじめに
こんにちは、ファイナンシャルプランナーの坂口です。
ライフプランやFP相談をお受けしているなかで、家計改善のお話になることもよくあります。
それらのご家庭では多くの場合、収入と支出のバランスが上手くいっていないことが共通の原因となっています。
このFP通信を読んでくださっている方の中にも、「ウチもそうかも…」とドキリとされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、赤字家計ではないものの、
「将来的に向けてこの貯蓄ペースで大丈夫か?」
「もっと貯めるにはどうすればよいか?」
という方もいらっしゃるかもしれません。
これらも、根幹の原因である収支バランスを調整することで不安が安心に変わることがよくあります。
そこで今回は、同じような悩みを持つ方に向けてFP通信をお送りさせていただきます。
家計改善のお悩み軽減に、少しでもお役に立てていれば幸いです。
家計管理の「ウルトラC」はあるのか?
まずはじめに謝らなければなりませんが、私にご相談いただいても「ウルトラC」(死語?)のように即日で家計を大復活させることは残念ながら難しいです。
家計管理はダイエットと似ているとよく思います。
・ご相談者様=ダイエットされたい方
・FP=トレーナー
としていただくとイメージがつきやすいのではないでしょうか。
トレーナーに相談したところで「すぐに激やせ」はできないのと同じく、FPに相談したからといって「楽に収支が改善できる」というわけではありません。
残念ながら家計改善は、楽で華やで即効性のあるものではないことが多く、生活習慣の改善のように“地道で地味な”ものなのです。
唯一の希望の光は、これらは一旦身になれば習慣となり、ほぼ無意識にお金が貯まる家計になれるということです。
ただ、そこに至るまではある程度“他人の目”が入った方が効果的な場合もあり、ここが我々FPの存在意義のひとつでもあるわけです。
ダイエットでお金を払い○○ザップに通うのにも似ているかもしれませんね。
FPはあくまでサポートと水先案内人であり、実際に家計を運営するのは当然にご相談者様自身ということです。
では、どのように家計改善をすべきなのか?
ズバリ、今回のテーマである「家計管理はコントロールできることから」が最大のポイントです。
「何がコントロールできるか」は各ご家庭ごとに違います。
ただ経験上、サラリーマン&サラリーウーマンのご家庭では、収入よりも支出の方が間違いなくコントロールしやすいです。
収入をコントロールしようとした場合、例えば専業主婦の奥様がパートを始めるなどは、確かに非常に効果的な改善手段のひとつであることは事実です。
ただ、現在専業主婦という選択をされていらっしゃるのにも何らかの理由があるのではないでしょうか?
仮に特に深い理由はなく、すぐに働きに出るという選択が出来たとしても、希望に合う勤務先とご縁があるかは分かりません。
また、小さいお子様がいらっしゃる方は預け先も見つけなければいけませんが、すぐに預けられるかどうかはコントロールが難しいです。
他のパターンとして、既に共働きの場合では、収入を上げようと思うと転職や副業などが手段になり得そうです。
ただ、もし本当にそう簡単に収入が上げられる働き方があるのならば既に実行されているのではないでしょうか?
対して、支出の削減はご自身の意思だけでコントロール可能です。
「いやいや…ウチは節約もしているし、もうこれ以上削減は難しいよ」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
たしかにそうなのかもしれませんし、努力は決して否定されるものではありません。
ただ、ここでは収入か支出のどちらがコントロールが容易かだけにフォーカスして考えていただきたいのです。
私は、月1万円収入を増やすより、月1万円支出削減する方が簡単だと思うのですがいかがでしょうか?
少なくとも収入増加は多少なりとも他人が関与しますが、支出軽減は自分の意思のみでコントロールできるはずです。
コントロールできないことを気にしていても事態は何も好転しません。
(むしろ時間経過とともに現状の改善が難しくなり悪化する)
もし望む未来と現状とに乖離があり、その乖離がお金で解決でき、本心で改善を望むならば、まずはコントロールできることから一歩を踏み出して見た方が良いと思うのですが、いかがでしょうか。
支出の削減には、多くの場合痛みが伴う
収入より支出の方がコントロールしやすい点はご納得いただけたでしょうか?
もし確かにそうだなと思っていただけたた方は、ここから先を読み進めてみてください。
改善について、実際のご相談現場では、
「何ならば削減できそうか」
「どう進めていくのが負担感が少なく継続可能か」
などをご家庭ごとに一緒に考えていきますが、最終的にはご相談者様の価値観でお決めいただくと良いと思います。
そもそもお金の使い方は自由ですし、他人に決められ押し付けられるよりも自分で決めた方が納得感があるものです。
下記には改善のポイントを紹介いたします。
●赤字家計の場合
まずは、少なくとも「収入の範囲内で」生活できることを目指されると良いと思います。
※ここでは毎月の収入を指します。「毎月赤字だがボーナスで補填して年間では黒字」の家計は黄色信号です。
●貯蓄額を増やす必要がある場合
上記と似ていますが、
「毎月の支出+毎月の貯蓄額≦毎月の手取り」
になるよう調整してみてください。
毎月の貯蓄額は、目標となる貯蓄額を使いたい時期から逆算し毎月に落とし込みますが、将来必ず必要な(もしくはそうありたいと思う)お金のため、ここはコントロールできないとみなします。
(貯蓄は税金やローンのように義務に近いと考える)
つまり、ここでもやはりコントロールできるのは「毎月の支出」となります。
これらのポイントをダイエットに例えて整理すると、太る理由は「摂取カロリー > 消費カロリー」になっていることが原因です。
それを「摂取カロリー < 消費カロリー」にすることで、ダイエットはシンプルに成功に近づくというわけです。
(実際のダイエットは栄養素なども大切なのでしょうが例なのでご容赦ください)
ただ、摂取カロリーを抑えるということは、イコール、美味しいものを我慢するということです。
この我慢がツラいのは私も身をもって分かりますが、それと同じように支出を下げるのには多くの場合痛みが伴う(=覚悟が必要)ものです。
例外的に痛みが無かったり少ない支出削減もありますが、生活に関連するもの(変動費といいます)の削減はほぼ間違いなく痛みが伴います。
・これまで自由に使っていたお小遣いを減らす
・晩酌を辞めたり、外食を減らしたりする
・あまり行っていない習い事を辞める
など、どれも「美味しいものを我慢する」のと同じ状況となります。
これまでの習慣を変化させるためには、当初は残念ながらどうしても痛みを伴ってしまうことは避けられない事実なのです。
けれども、どうかご安心ください。
確かに支出削減には多少の痛みが伴うのは前述の通りですが、習慣化すれば痛みは痛みではなくなります。
その頃にはある程度自然にお金が貯まる家計に変身していますので、そうなったら貯まった額はある程度好きにお使いいただいても大丈夫になっているはずです。
《補足》
誤解を招く恐れがあるのでここで補足させてください。
まず、支出は悪ではありません。お金を使うのは楽しいですし無駄遣いも時には良いものです。
そもそも、お金は人生を豊かにするツールであるのに、使うべきときに使わずに節制するのは全くもって本末転倒だと思います。
家計改善は“絶食”のように極端にカロリー制限をするような過激なものではないのです。
「毎日ハイカロリーなものを食べてたら、そりゃ太るよね(短期的には幸せだけど…)」という家計を、「健康を保ちたいなら、普段は身体に良いものを食べて、ハイカロリーな食事はたまににしてみませんか」という習慣に変えるというイメージということです。
なんのために削減するのか?
これまで好きに使っていたお金を削減し我慢するのは、正直ツラいです。
そして、ツラいことは誰しも避けたいものだと思います。
そのため、そのツラさを乗り越えるには「なんのために」支出削減をしているのかという目的が、自分の腹に落ちている必要があります。
度々ダイエットの例で恐縮ですが、「なんとなく痩せたい」とただ闇雲に食事制限しても、いずれ欲望に負け暴飲暴食しリバウンドしてしまうのとよく似ています。
ダイエットも成功するには「なんのために」という確固たる意思が必要ですが、
・健康になりたい
・痩せて見返したい
・せっかく買った服が着れなくなってきた
・医師から減量を指示された
などが原動力になるのでしょうか。
家計改善の場合の「なんのために」は多くの場合、遠い未来で叶えたい人生や目標です。
日々の支出削減は、その未来を叶えるために逆算したコントロールできる目先の現実的な手段であり、それらは全て繋がっています。
叶えたい目的のための我慢は努力とも言い換えられると思います。
その努力をやり遂げた先には、きっと明るい未来が待っているはずだと私は信じています。
まとめ
散文に最後までお付き合いいただきありがとうございます。
実は、私自身も赤字家計から脱却したひとりです。
今はなんてことはない当たり前の状態ですが、削減当時の痛さは覚えていますし、そのツラさも分かるからこそ同じような思いをされている方のお役に立てればと思いこのFP通信を書きました。
(ちなみに私はダイエットは苦手です。習慣化の壁を身を持って痛感しています。)
家計の悩みは孤独で、なかなか打ち明けづらいものです。
「思ったように家計が運営できていないな」
「将来に漠然とした不安があるな」
と思われる方がいらしたら、お力になれるかもしれません。
もしお困りでしたら、いつでもご相談いただけたらと思います。